フェミじゃないけど

澁谷知美さんのブログ「ゆるい日記」の2005年9月24日の記事から。
現在はブログ自体が(なぜか)なくなってしまっているので、Web アーカイブから引っ張ってきました。えーと・・・、仁義なき全文まるごと引用です ごめんなさい。クレームが付いたらコメントアウトいたします、ということでひとつ(^_^;

イラストは澁谷さんが書かれたのでしょうか?

(2005.09.24) フェミじゃなくたっていいよ、仲良くしよう

【1】

気が早いが、今年の流行語大賞には「ちょいモテ」が選ばれると思う。
もともと達成率の低い輩がハナから「ちょい」をめざしてもなんにも得るもんないよ! ということを松尾スズキがいっていたが、けだし箴言

しかし、それよりもよく聞くのが「私フェミニストじゃないけれど」という言葉です。流行ってんの?! ってぐらいよく聞きます。
あとには「やっぱり今の社会って男がトクになるようにできてるよね」てな言葉がつづく。それだけフェミ的な見方が世間に広まってきたということなんでしょう。というか、女子が男社会で働きはじめると、おのずと見方がフェミ的にならざるをえない。
フェミを自認している私に「私、フェミニストじゃないけれど」と話しかけてくれる時、そこには、あなたとなら問題を共有できると思うんだけど……というニュアンスがある。勝手な思いこみかもしれないけど、その「頼られている感じ」は、秘め事を明かしてもらったみたいで、とても嬉しい。
だが、この言葉は、そうであると思われてはかなわない程度に「フェミニスト」という「カースト」が汚れまくっていることをも示している。ふだん、決してあからさまに差別意識を表明しない心優しい女子の口から、この言葉がうっかり漏れでるとき、ああ、フェミってバカにされてんなぁ……と心底悲しい気持ちになるのである。

【2】

話は飛ぶけど、母と『30年のシスターフッド』を見た。リブを経験した女性たちの現在をつづる、面白くて元気になるドキュメンタリーである。
身内を褒めるのもなんだけど、私の母は、知的で優しく、バイタリティあふれる、非常にカッコいい人である。私が幼いときから呪文のように「自分で食っていけるようになんなさい」と唱えていた。男兄弟に囲まれて育ったが、ぜったいケンカに負けなかったのが自慢。女であるがゆえにいくつかの夢をあきらめてきた経緯もある。リブであってもおかしくない人である。
世代としてもばっちりリブの母がなぜリブでないのか、私はずっと疑問だった。そのことを質問しようと思い、わざわざ誘って見たのだった。
母はいきなり冒頭のシーンで涙した。女性たちが、心から楽しそうに、フォームなんかお構いなしに自由自在に踊るシーンである。そして、出演者たちと一緒に笑い、彼女たちのメッセージに大きくうなずいていた。
見終わったあとにした「それだけ共感できるのに、なんでリブにならなかったの?」という問いにたいする母の答えは、きわめてシンプルだった。
「リブは激しくて狂信的な集団だと思っていたの。報道がひどかったからね。今日見たような人たちだってわかってたら、リブに参加してたよ」。

【3】

リブ的な活動がフェミと呼ばれるようになった現在も、報道のあり方は変わっていない。
家族を破壊する、少子化の元凶だ、ゆきすぎた性教育をする、女を生意気にした、男をインポにする、ブスのヒステリー、スグ啓蒙しようとする、威圧的、傲慢、ヤリマン等々──フェミは便利なスケープゴートとして日々消費されている。
そらー「私フェミニストじゃないけど」と言いたくもなりますわな。考えてることはフェミとまったく一緒であっても。どんなフェミニストもあなたと同じ「普通の女」なんですよと言っても、信じてもらえないんだろうな。
うちの母のようにフェミにシンクロできる要素は十分あるのに、あるいは、すでにフェミの思考に乗っかってるのに、「私フェミじゃないけど」と平然と言ってのける女性はこの世にゴマンといると思う。ちょっと前までは、そういうい人を鈍感だとか簒奪者だとかいって毛嫌いしていたのだが、弱者切り捨てのネオリベ政策の嵐が吹きまくる昨今はそんなこと言ってられない感じ。
フェミだろうと、そうじゃなかろうと、問題が共有できるだけでありがたい。手を取りあって仲良くしていきましょう、という気持ちでいっぱいである。
近々オモシロ女子イベントが幾つか開催されます。生きるのに疲れたり、なんで女子だけこういう目に合うの? っていう疑問をお持ちだったりする女子のみなさん、一緒に行きましょうよ。フェミを名乗る必要はまったく無いからさ。
それにしても、「ちょいモテオヤジ」と「フェミニスト」は、「あの人って……」と言われる時、末尾に(笑)が付きがちな点で似ている。
(05/09/26 すこし改訂)

http://web.archive.org/web/20060223051826/http://shibuya.txt-nifty.com/blog/2005/09/post_f9d7.html

※ご参考:女性の「いきすぎてないフェミ」「フェミではないけどひどい」という保険 - Togetter 女性の「いきすぎてないフェミ」「フェミではないけどひどい」という保険 - Togetter